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初倖(うゆき)がお送りする 独り言ブログ。 /「なづゆき」「帝雅」って名前も使ってる/ 大した事は書けませんが 基本的に日常的な記事が無ければ 詩や小説、論などを記しています。 ペットのことや、その日あったことも書けたらなあ。 読んでくださるっていう方は 是非ともコメントお願いします。 ツイッター 本垢  @_other_world_ コス垢 @nadu_cos
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 ヒトは水の中で生活し、あらゆる動物が空を飛び陸地に生息する。
 ヒトが陸で暮らしていたという伝説は、代々受け継がれているが、何千年も昔の話だ。
 しかし……。
 突然変異による異端。水中では呼吸が不可能で、陸地でらなば生きられるヒトが、稀に発生する。だが親は長い時間陸上に居ることが出来ない――がために、泣く泣く子を見捨てるのだ。
 それはいっそ殺してしまうもの、あるいは低確率の中生きて欲しい一心で陸上へと置くものの二つに一つだ。
 (かける)はその後者だった。
「なあ、腹減ったんだけど」
「まだ早ぇよ」
 水中を知らず、陸上の世界を知った。
 陸上で生活をしている者は、水中に比べればごくわずかなものだが、まったく居ないわけではなかった。
 今翔の目の前に居るこの男――宰雅(さいが)は、もともと水中で暮らしていたが、好奇心で陸上に出てみると、その鮮やかな美しさに魅了され、そして長時間過ごしても少しの影響もなかった。むしろ開放された気分で、そのとき漸く自分が中途半端な突然変異だと気付いたらしい。
 翔を拾い、言語や行動の教育をし、十二年間、ここまで育て上げたの宰雅だ。
 宰雅は幼いころの記憶……つまり、水中で暮らしていたときのことを、度々翔に話す。そこは電気こそ点いて明るいが、真っ暗で、何の面白みもないところだと。
 この陸上のように、照らす太陽も、茂る緑も、なにも無かったと。
「ちょっとお! 先に行くなっていつも言ってるでしょーっ!? 何で置いて行くのよーっ!!」
 キンキンと高い声を張り上げて後ろから走ってくる少女は、長く明るい茶髪をポニーテールに縛っている。
紫暮(しぐれ)が遅いだけだろ!」
 二人とは違い、紫暮は最初から陸上に住んでいた原住民だった。宰雅が初めて出会った陸住まいの人間。彼女はほんの十人ほどの村体系の所で生活しており、宰雅も翔も、その村の人たちとは仲が良い。
「違うわよ! アンタたちがひょいひょい行っちゃうからでしょ! 私めちゃくちゃ息切れしてるのに、アンタたちの体力は本当宇宙ね!」
「水中と陸上の生活の違いだな。肺活量とか」
「え、コイツは日頃の運動不足のせいだろ」
「失礼ねぇ! 誰かさんのお陰で毎日鍛えられてるわよ!」
 紫暮の声を背中に聞き、翔が勢い良く海に飛び込む。ピューッと指笛を吹くと、大きな波紋が立って、巨大な生物が姿を現した。
「よう! 元気かあ、春風(はるかぜ)!」
 春風と呼ばれたそれが、嬉しそうに翔に擦り寄る。
 二つの魚の尾と、背には硬い鰭、口から見える牙は明らかに獰猛で、真っ黒な身体。何の制御も受けない野生であれば、危険な生物。だが、翔たちはこうした生物を飼いならし、友として一緒に居る。
 決して、主とペットのような上下のある関係ではない。
「翔! 割と大きめの鯵を五匹、お願い出来るー?」
「楽勝!! いくぜ、春風!」
 ざぱっと波が揺れ、翔と春風が水中に沈む。暫く時間が経ち……「ぷはっ」と大きく息を吸い込む声とともに、翔が顔を出し、陸に魚を投げる。
「ありがと」
 海賊。
 それが宰雅と翔の職業だ。
 もともとは宰雅が、水中に長く居られることから始めた仕事だった。
 魚を生きる糧とするべく食べるため求めた村人のために、潜って取ってきたことがきっかけ。
 海に生息する魚を、その命を、狩る。
 翔は特殊な能力を持っていたために、宰雅と同じことをした。
 狩りを手伝ってくれるのは、春風のように、海に生息するやつら。翔はこの友達と話すことが出来たのだ。
 他の誰にも出来ない、こと。
 これは海の生物限定のようで、川魚や陸上の生き物の言うことはさっぱりわからなかった。
「まったく、不便なのか便利なのかわからないわよね。魚と話せても……人間と話せないんじゃね!」
「はあ!? 人間とも話せるし!」
「あー、ごめん。何言ってるかぜんっぜんわかんないわ」
 にやにやと笑いながら首を横に振る紫暮。
「てめ……」
「……ね、翔。今日、うちでご飯食べない? ままもぱぱも、翔をうちに呼べって言ってるし……どう?」
「あー、俺はいいや」
「行ってやれよ、翔。お前いつも断ってるだろ」
「ええっ、宰雅がそれ言うの? 宰雅、一人になるぜ?」
「さっ、宰雅も! 宰雅もよ!」
 春風が水の中からおろおろとその様子を見ていた――のが、一変した。唐突に声を張り上げて鳴き叫ぶ。
「春風!? どうしたっ」
 翔がはっと向こうを見る。
「……ッ人魚だ! 宰雅、あいつらまた……!」
 人魚は人間とは明らかに違う。二本の足の変わりに生えた魚の尾といい、口の隙間から見える牙といい……そしてなにより、彼等は殺戮を好む。水中に居る人間の天敵でもある。
 彼等は新月には、人間と同じ足を生やす。ただ、変化は足だけだから見分けはすぐにつくのだが――陸の人間もそれに被害を受ける。かといって、慣れない陸上だと、幾分か原住民のほうが有利なのだが。
 そんな人魚どもを退治するのもまた、二人の役目だった。
「もう何匹もやられてる! 宰雅!」
「わーってる」
 宰雅も海に飛び込み、深く潜る。翔と春風も、それに続き……。
「ふっ、ふたりとも!」
 叫んでも、声は届かない。
 春風につかまり、迅速にその場所まで行く。気付いた人魚は、くるりと身を翻し、襲い掛かってきた。
 まず狙われたのは、明らかに春風だった。
 それもそうだ。
 一番大きく、一番強く見える。一番楽しく殺せる相手だと判断したからだ。
 残虐することを快楽とする彼等は、一息に相手を殺さない。徐々に徐々に傷つけ、殺す。
 言葉を介さない人魚は、彼等独特の何か通信方法があるらしく、やっかいだ。
 春風に噛み付く人魚の視線を逸らすため――翔は自らの腕を切り、血のにおいをあたりに撒いた。
 ぎょろりと動いた目が、翔を捕らえた――その一匹を、瞬時に死角に移動して、首元にナイフを一突き。いくら化け物じみた奴でも、首や頭をやられれば一発、ともいかず。力を込めてナイフを動かし、深い傷を残す。
 生命力治癒力ともに高い人魚たちは、決定的なとどめを与えてやらないと死なない。
 仲間をやられて、流石に怒った人魚がいっせいに翔に襲いかかる。だが、それが狙い通り。後ろに控えていた宰雅が、何かを水中に撒いた。白い粉のようなもの。
 にっこりと良い笑顔をして、翔が後ろに下がったのを確認し、腕を前に伸ばしたとたんに、水中で青い火が吹いた。
 それは粉を伝ってどんどん広がり、人魚を覆った。
 翔はいつのまにか上に上がっていて、宰雅は人魚一匹いっぴきの心臓に刃を通して、きちんと死んだのを見てから上がった。
 水の中であっても、燃える火。それを、作ることは別として、出すことが出来る人間はそうそう居ない。宰雅もまた、特殊だった。
 その力を、誰か他人が否定しても、自分が否定したことなんて無い。
「かぁける、大丈夫か?」
「けほっ……平気」
「今日はちょっと長かったからなぁ。さて、戻るか。紫暮が待ってるだろうし」
 また春風につかまり、もとの陸地まで戻ると、紫暮が海に足を突っ込んで待っていた。
「ただいまー」
「おかえり。大丈夫だった?」
「俺はね。ただちょっと、時間掛かっちゃって、翔が水飲んだかも」
「えー。ダサいなあ」
 春風を帰して、ダメだしをする紫暮を睨む。
「このやろう」
「……びっちょぬれね! わ、私の家に来てちょっと乾かして行ったら? それで、ご飯も食べていけばいいじゃない」
「そんなに来て欲しいのかよ」
「ばっ……馬鹿じゃないの!? 違うわよ! アンタが可哀想に見えたから仕方なくよ! ままもそう言って…ないけどっ、連れておいでって言ってたのは本当!」
 紫暮が真っ赤になって弁解する間に、宰雅が翔の頭をくしゃくしゃに撫で回して言う。
「行こうか」
「……ま、宰雅が言うんだったら……」
「来る、のね? じゃ、じゃあ早く行くわよ! 遅く行って風邪引いたって知らないけど!」
 紫暮が、取ってもらった鯵を抱えて、さっさと自分の家に向かう。
「水に濡れたくらいじゃ風邪なんて引かねぇよ」
 宰雅も翔も……含まれた意味は違うが、苦笑いをしながらそのあとについて行った。
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サビシイ
 君と出会ったのは、晴れやかな月の出ている日だった。
 その日は深々としていて、冷たい風が肌を撫でるような。虫の声も人の足音もなかった。電気の点いた暖かそうな家からもれる人の声だけが夜道に響いていた。
 僕は小さく丸まってた。その寒さから逃れるために……。このまま寝たら、なんだかもう起きられない気もした。
 遠くから聞こえてきたのは、学校帰りの君の足音。君は小さな僕に気づいて、わけもわからず怯える僕に手を差し伸べて。
 小さく呻いて抵抗する僕を、その温まった懐にしまいこんで、自分の家に連れて帰ってくれた。
 汚れた僕を丁寧に洗ってくれて、ミルクをくれて、ソレを必死で舐めて飲む僕のことを、君はずっと微笑みながら見てたってこと、もちろん、気付いていたさ。
 僕が満足して君を見上げたとき。その時のことば、いまでもちゃんと憶えてる。
「君が嫌じゃなかったら、家族になろう」
 って。
 あの時はわからないながらも嬉しかったことば。いまはもっと嬉しく感じるよ。
 君は僕に寝床も、えさも、そして証である首輪もくれた。薄く色づく灰色の毛に、黒く映えるやつだったね。
 君と散歩に出た時々も、遊んだ時々も、大切な思い出だ。
 だから僕も、遠慮しないで、沢山イタズラもしたけど、沢山甘えて、沢山愛情表現した。君は笑っていたけれど、本当にわかってくれていたのかな? 僕がどれだけ、君が大好きだったかを。
 でも、それもだんだん出来なくなっていってた。君にはいつもと変わらない態度をとっていたけど、実は、自分でも知ってたんだ。
 僕にはもう時間がない、ってこと。
 ありがとうじゃ足りないくらいのありがとうを、長い間共に過ごした日々の喜びを、表現出来なくて。
 どうやっても伝わらない「ありがとう」や「大好き」を伝えられたかな。
 僕はいつまでも見守ってるから、……見守ってるけど、君には幸せになって欲しいから、僕を忘れてくれてかまわないよ。
 かまわないから、お願い、もう、泣かないで。
 表面で強がったフリをして、心の中で泣かないで。僕はわかってしまった。その涙で。
君がどれほど僕を愛してくれていたか。
 わかって嬉しいはずなのに、何でかな。
 僕にはないはずの……感情の雫が、僕の目からも溢れて止まらないんだよ。
ありがとう、大好き、……寂しい。
「いつまでも一緒に居たかったよ」
 なんて、僕もだよ。
 僕は君が大好きだから、君の『さびしい』を僕が食べていく。
 二人分で一つの『寂しい』を僕が抱えるから、君は幸せを抱えてください。

 
 
ジカン
 私は大学へ行くために一人暮らしをしていた。
 でも学校ではあんまり話せなくて、ずっと俯いてばかりだ。もう何も彼もやる気がなかった。
 そんな日々の過ぎたある寒い夜、バイト帰り。道の途中に小さな毛玉が丸まっていた。震えていて、汚れていて、怯えた目をしていた君を、放っておけばいいものを、私は拾った。
 冷たい君のことを、温まっていたコートのなかにしまいこんで、出来るだけ暖めようとした。
 アパートはペット可だったし、私以外何者もないし。
 この空虚な空間に、小さなぬくもりが、欲しいって思った。
 君は逃げようとすることもなく、私のもとに居てくれて。
 時に大切にしていたものを壊されたりして怒ったけど、時に私にすり寄ってくれて。私が落ち込んだときなんか、わかるのか、そっと静かにそばに居てくれてたよね。
 君が来てくれてから、大学のひとたちに「雰囲気変わったね」って言われるようになって、沢山の友人が出来た。
 私がもっと大人になって、就職して、家に居る時間が短くなっちゃって。独りにしてごめんね。大切な時間を孤独に過ごすこと……させてしまった。
 君が日に日に痩せていること、なかなかどうして気づかなかったんだろう。悔しいよ。
 私が仕事から帰って、出迎えてくれない君があって。窓ぎわに横たわって、ゆすってもピクリともしてくれない君を……抱きかかえた。
 嫌だ、嫌だよ。
 君はどんな気持ちだったろう?
 私を恨んでくれてかまわない。
 だって全部私が悪い。
 ごめんね、大好きだよ、目を開けて……。
 私より後に生まれてきて、私より先に逝く君を、今すぐに追いかけたい。
 追いかけたいのに、足が動かないの。やりたいことだって沢山ある。
 私はどちらを望むべき?
 君は炎の中で、骨になって。私の家の中に居るけれど、ぽっかり空いたこの感覚はどうすればいいの?
 ううん、大丈夫。
 君に心配なんてさせないから。……ねえ。
 あのときあんなに哀しかったのに、時のせいか、もうさびしくないの。私には恋人も出来て、子供も出来て、ひとりじゃない。
 やりたいことも、嫌なことも、ぜんぶぜんぶ受け取った。
 君の記憶はだんだん薄れていく。
 でも、君を忘れないよ。……忘れたく、ないよ。
 思うほどに時間は経って、私は自分を行き抜いた。だけど、だから。
 今から会いに逝くね。
 君との時間を過ごしにゆくね。


―――――――
これが部活に出した
文化祭前最新作かな。
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「ねえ、ねえ訊いていい?」
 唐突に声を上げる少女。
「ねえ、ねえ君は、そんなところで何をしているの?」
 にこにこと笑いながら言う。
「ねえ、ねえ答えてよ」
「……別に、何も」
「ねえ、ねえそれ嘘でしょ? 言ってよ、ほんとのこと。桜を見てましたって。春を感じてましたって。あら、あら嘘なんて悪い口。本当は恐怖してましたって言ってよ」
 しつこく喋る少女。
 いまは風も何もなくて、少女の声は響く。
 数少ない通行人が少女を怪奇の目で見ているのがわかる。
「そう、そういつも見てる。いつも見てた。気になっちゃった」
「気にしなければいいのに」
「急に現れた君は。ずっとその桜を見て」
 舞い散る桜の花びらの下、くるくると回って遊ぶ。
「もの悲しそうな顔をするの」
「……そんな顔してるかな」
「してる、してるわ」
「何があるの? その桜」
「知らないよ」
「ううん、ううん知ってる。死ってるんでしょ?」
 ぴたりと止まった少女は不意に怪しい笑みを浮かべた。
「知ってる、知ってるの。だってこれで六人目。あなたで六人目。この桜の下で眠るひと」
「……え」
「ふふ、ふふ、ふふ、あはっ。桜の養分となって、綺麗に咲いてね。綺麗な色に咲いてね」
「死、……?」
「ああ、ああ君は気付いていないの? 君は死んでるの、とっくの昔に、私のために」
 人の少ない小さな村。…の、小さな庭。…に、大きく咲く桜の木。
「私の桜、私の桜。綺麗に咲かせて頂戴ね。じゃないと、君、ずうっと、……」
 ぴっとりと桜の太い幹に縋り付く。
「だぁいすきなこの子のために、こぉんなに栄養を集めたの。…さ、君も眠りなさい。永遠に目覚めない眠り」
 ぴっと少女が死者に手を伸ばすと、ふっと消える。
「ふふ、ふふ。だいすき、だぁいすき、だぁぁいぃすきぃぃ。それだけじゃ足りないくらい、愛してるの」
 ざわ、とゆらめく桜の木。
 それは永久の呪縛。
「ありがとう、黒。これでまた美しく咲く」
「白…貴女のためなら、何でも」
「ふふ、黒、君も好きよ。桃ほどじゃないけど」
 少女とそっくりの少年が、いつの間にか後ろに立つ。
「桃、桃……」
「大丈夫、桃も貴女を愛してる。だから、こんなに綺麗に咲いてるんだよ?」
 つ…と指で花を撫でる。
「そうね、桜になった桃。アナタがどんな姿でも、大好き」
「はは、白ったら、どんな姿でも…って、貴女が桃を桜にしたんじゃないか」
 くるりと振り向いた少女は、嫌なほど気持ち悪く笑っていた。
「だって…桃が悪いんじゃない? 私はこんなに大好きなのに、他の…しかも男なんかと、恋仲になるなんて。私以外を見ちゃいけないの。私以外が見ちゃいけないの。桃は私のもの。……私の影である黒は、いいのよ? 黒はいい子だもの。黒は私から桃を取らないでしょう?」
「そうだよ。僕は白の大切な桃を取らない。だから白も、僕から離れないでね? 同じ腹から、同じときに生まれた、唯一の双子なんだから」
「ふふ、ふふ黒。私が君から離れるなんてないわ。どこにいてもわかるくらいに」
 少女――白が、少年――黒に口付けをする。
「いいの。世界には私たち三人姉妹弟(きょうだい)しかいらないの。桃は…(わたし)に大切にされて、幸せ者ね」
「そうだね。じゃあ双子(しろ)双子(くろ)に大切にされて幸せ?」
「ええ、ええ。とても幸せ。三人で仲良く暮らせて幸せよ。桃の栄養になってしまったひとたちは…カウントしなくてもいいわよね?」
「要らないだろう?」
「さっき現れた魂は、もう食べられちゃったかしら」
「どうしたの? 他を気にするなんて珍しいね」
 黒が白に、後ろからそっと抱きつく。
「いいえ、いいえ何でもないわ。さっきの魂は、ずっと表に出ていて…とても未練がましくて、なかなか食べられなかったから」
「あは、確かにしぶとかったね。僕が捕まえてきてから、随分経つ」
 白の手に手を重ねて、黒は囁く。
「僕も、例え白がどんな姿になっても愛してる。白が嫌がっても、どんなことしてでも僕の前に居させるよ」
「私も、桃の長くて綺麗な茶色の髪が見れなくたって、言葉を掛けてくれなくたって、愛してるもの。黒の気持ち、わかる。でも私が黒を嫌がるなんてないわ」
「白が死んじゃって、天国に行こうとしたら引き止めちゃうかも」
「天国なんて行かないわ」
「僕が白を殺しても? 僕から離れない?」
「ふふ、ふふ黒が私を殺すの? いいわ。そうしたら、桜の横に埋めて、いっぱいの百合を咲かせてね。綺麗にいられるようにしてね」
 くすくすと笑って、冗談とは思えない口調で言い合うふたり。
「じゃあ、僕が死んじゃったら?」
「そんなの、許さないわ」
「わからないじゃん。どうするの?」
「そうね、そしたら…桜の向かいに埋めて、一面に薔薇を咲かせてあげるわ」
「ありがとう」
 白の長い髪を、指に絡める。そのまま髪にキスを落として、まっすぐ互いに見つめ合った。
 
 
 
――ああ、恐ろしいこと
――本当に、あの桜
――春だけじゃなく冬になっても咲き続けてるなんて
――しかもそれも、ずうっと長い間
――わたしが物心ついたときからずっと
――そういえば、ときどきいる女の子…
――男の子もいるけど
――あの家の子らしいけど…
――ちっとも成長してないわよ
――ああ、恐ろしいこと
 
 
 
村の人々は口々に言う。
 あの桜には近づくなと。
 怪しく咲く桜が、ひとの生気を奪うと。
 だが、この村で、行方がわからなくなったという人の話はない。
 桜の下に埋まる人の家族は、まるでその人が最初から居なかったかのように過ごす。
 大切な人間が消えたことにも気付かず、彼らは残酷に過ごしていく。




―――――


これは部活に提出した最近の小説。
最近……の俺、病んでるね。

 
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「言わないなら何も信じられないな。まあ、それはおいといて。遅れたけど、僕は紅輝-コウキ-って言うんだ。君は?」
「・・・・・・私に名前なんて無いわ」
「そんなはずないでしょ」
「事実よ。あっても無意味」
 少女は自分の両掌を見つめた。
「どうせ死ぬのだもの」
「・・・・・・・・・」
 紅輝は溜息を吐いた。そしてよしっと意気込む。
 少女が何だろうと首を傾げると指を差した。

「君の名前は蒼希-ソウキ-!」

「・・・は?」
「僕はあかだから、君はあおだよ。いいね、兄妹が出来たみたいだ」
 勝手に蒼希と名づけられた少女は唖然とする。
 言葉すら紡げず、口をぱくぱくと開閉させる。
「宜しくね、蒼希」
「・・・・・・っ。だから、私はどちらにせよすぐに死ぬのだから・・・・・・」

「あるところに、ひとりの女の子がいました」

 蒼希の声を遮って、紅輝は切り出した。
「その女の子は生まれたときから体が弱く、病気をわずらっていました」
「な・・・なに・・・?」
「あるとき、ひとりの男の子と出会いました。ふたりはすぐに仲良くなって遊びました」
 紅輝が蒼希の隣に座る。
「でも、そんな時間は長くは続きませんでした」
 何を見るわけでもない。
 紅輝はただ天井を見上げながら言うだけだ。
「女の子の容態は悪化するばかりです。あるとき、衰弱した女の子は言いました。」

『きっとね、生あるものはそれぞれの宿命を負って生まれてきたの』

『その宿命を果たして、生きた証を残して・・・ううん、誰に知られなくてもいい』

『それをいま証明するために、名前ってあると思うの』

『あなたの名前は素敵ね』

『だって、紅く、輝いているんでしょう? 生の印ね』

「女の子は最後の最期まで笑っていました。・・・果たして、彼女の宿命とは何だったのでしょう・・・・・・?」
「何・・・って・・・」
「その子は最期まで・・・死にたいとも生きたいとも言わなかったよ」
 ただ・・・・・・さいごまで幸せそうだった。
「・・・・・・宿命があるとしたら、私の宿命は自らが死んで世を救うことね」
「死ぬのは宿命じゃないよ。愚行だ」
「・・・では、殺されること、かしら?」
「それも一緒だろ!」
 蒼希がふうと息を吐く。
「・・・教えてあげるわ。・・・禍」
「え?」
「死者の国と生者の国が繋がってしまうことよ」
 天国、地獄と名称される世界――死者の国。
 今、この全てが生きている世界――生者の国。
 繋がってしまうと、生者は死者に飲み込まれる。死者はもともと死者でしかないから、生者は勝つことは出来ない。
「・・・なんで?」
「だから」
 紅輝の問いかけに、蒼希が更に説明しようとしたとき。

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「・・・それで、貴方はいつ私を殺してくれるのかしら」
 少女は少年の家に居た。
 少年と少女以外そこには誰の姿もなく、ただ静かな空間。
 愛玩動物など保護者など、そんな生き物の気配は窺えない。
「まだだよ。いいじゃないか、もう少しくらい」
「・・・早く、はやくしなければ」
「なんでそんなに急ぐのさ?」
「早く死ななければ、禍が起こるのよ」
 少年がお客用のマグカップにココアを注ぎ、少女に手渡す。
 少女はそれを受け取って、少しだけ啜った。
「私は私自身で死ぬ事が出来ない。・・・否、恐いからとかではなく、ただ・・・そういうふうなの」
「・・・・・・いやまあ、それは置いといて、禍って?」
「禍は禍。私が生きていることで起こってしまうこと」
 静かに持っていたカップを透明なテーブルの上に置く。
 ストーブの火の音だけが静寂を妨げた。
「だから」
 少女は少年の袖を掴んだ。

「だから、早く私を! 私を殺して!!」

 まっすぐな視線を送る。
 だが少年は黙って自分のココアを口にした。
「・・・駄目だよ」
「・・・・・・・・・何故? 貴方も私を殺せないと言うの?」
 袖からその手が落ちる。
「今まで幾度と其処行く人間に言ってきた。けれど、駄目。誰も私を殺せなかった。みんな殺してくれなかった」
「・・・この家はね、今は僕しか居ないんだ。父さんも母さんも仕事で別々。アメリカとオーストラリアに居る」
「え・・・?」
「二人とも互いを愛し合ってはいるけれど、仕事も捨てられなくて、・・・別れちゃってる」
「それが・・・なに?」
「僕一人だとこの家は広いんだ。もうちょっとだけ、君と過ごすっていう時間を取ってからじゃ、駄目かな?」
 少年は淡く微笑む。
 対し、少女は複雑そうな顔をしていた。
「禍が」
「禍って何? 起こっても居ないことに対して、君が死ぬなんてわけわかんないな」
「起こるのよ。もう準備は整ってしまった」
「・・・内容が知りたいなぁ」
「・・・・・・・・・説明、しにくいけど」
 少女はそれきり黙った。
 黙って自分が受け取ったカップをじっと見つめたまま。
 少年は手元のココアを飲み干して、口を開いた。

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プロフィール
HN:
初倖
性別:
女性
職業:
ニートじゃないよ!
趣味:
絵描き、物書き、カラオケ、コスプレ
自己紹介:
うだうだしてます。
腐女子ですよ。
テンションの高い人、又はノリの良いひととなら気軽に絡めます。

コスプレ活動しつつ社会人で(逆)気ままに過ごしてます。
趣味で小説を書き詩を書き絵を描く。
Pixivに生息してます。



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