初倖(うゆき)がお送りする
独り言ブログ。
/「なづゆき」「帝雅」って名前も使ってる/
大した事は書けませんが
基本的に日常的な記事が無ければ
詩や小説、論などを記しています。
ペットのことや、その日あったことも書けたらなあ。
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ただのお遊び小説。
昔、鬼あり。人、いとめでたしと崇め、されどいと恐ろしと言ふ。
そのかみ、「かなたへ逃げし。」「先じまはれ。」とぞ、暗き森へ響く。照るはたいまつ。村人の追へるは、ひとりの女、さらに、ひとりの鬼にありけり。
女ありけり。かの女のかたち清らなりと聞こゆる。この姿見らば、人、まことに心憎しとぞ思はるる。
女、名を惺と云ふ。人、「あへなきほどうつくし。」と言へば、「嬉しき。しかれども、われよりほかに候はむ。」と言いけり。その人、「たはぶれこそ上手なれ。」とて笑ふのみ。
あはれなる月の出づる日、薬草とるため近き森行かば、迷ひぬ。何者もなくさびしながらありくことしばらく、心細くて涙落ち、そこにゐる。いかほど経てか、前より明かり来、「そこ、誰かあるか。」と尋ぬれば、「あり。」とのみ応ふ。「かかるところはいかでかゐる。」と問はれ、少し置きて、「迷ひにけり。」とていらはば、現るる男、かすかに笑ひて、「たびたびあること。」と言ふ。男の様子見えて、思はず、「や、世に稀なるうつくしさかな。」と言へる。男、さらに笑ひて、「あたらしきことば。」と言ひけり。
男の手伸べ、「来よ。」と言ふが、立てなく、「げに、恥づことなるが。」と言ひつつ足を撫でば、男近づき、惺かかへて立つ。「さればよ。軽し。」と言へば、「おろせ。」など言へども、おろさずすすみ、やがてひとつ家に着きにけり。「いづこか。」と問はば、「わが家なり。」と言ひ漸うおろさらる。
☆ ☆
その昔、鬼がいた。人々は、とてもありがたいと崇め、そのくせとても恐ろしいと言った。
一方そのころ。
「向こうへ逃げたぞ!」
「先回りしろ!」
そう、暗い森に響く声があった。光を放っているのはたいまつだ。
村人が追っているのは、ひとりの女と、さらに、ひとりの鬼であった。
容貌が美しいと世間で評判の女が居た。その姿を見たならば、人々は、本当にすぐれていると思うのだ。
彼女は、名を惺と云う。
「どうしようもないほど美しい」
そう言われれば、彼女はにこりと笑って返した。
「嬉しい。けれど、私よりもほかに美しい人はいるでしょう」
「冗談がお上手だ」
返された者は、そう言って笑うばかりだった。
ある風情ある月の出ている日、彼女は薬草を採るために近くにある森に行って、迷ってしまう。
何者もいなくて心細いながら歩き回ること少しの間、さびしくて涙が落ちて、そこに座る。どれくらい経ってか、前より明かりが来た。
「そこに、誰かいるのか」
男の声だった。声を掛けられて、震える喉からやっとのことで声を出した。
「います」
「こんなところにどうして座っているんだ」
そう聞かれて、少し戸惑った。けれど答えないのも失礼かと思って。
「迷ってしまったのです」
そのことが恥ずかしくて、少しうつむいてしまった。
現れた男は、ほのかに笑った。
「ときどきあることだ」
月明かりに照らされ、男の容姿が見えた。
「ああ、世に稀である美しさだわ」
思わず漏れた言葉に、はっと口を押さえる。
「もったないことばだ」
そう言って男は笑った。
男は手を差し伸べてくる。
だけど立てなかった。足を挫いて、ズキズキと痛んでいたのだ。
「本当に、恥ずかしいことなのだけど」
それを察してか、男が近づいてきて、惺を抱きかかえて立つ。
「思ったとおり、軽いな」
「おろして!」
突然のことに顔を赤くして、暴れるが、おろされないで進み、そのままひとつの家に着いてしまった。
「ここは…どこ?」
「俺の家だよ」
その家の中で、漸く惺は下ろされた。 参加してます!↓ぽちっと!
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昔、鬼あり。人、いとめでたしと崇め、されどいと恐ろしと言ふ。
そのかみ、「かなたへ逃げし。」「先じまはれ。」とぞ、暗き森へ響く。照るはたいまつ。村人の追へるは、ひとりの女、さらに、ひとりの鬼にありけり。
女ありけり。かの女のかたち清らなりと聞こゆる。この姿見らば、人、まことに心憎しとぞ思はるる。
女、名を惺と云ふ。人、「あへなきほどうつくし。」と言へば、「嬉しき。しかれども、われよりほかに候はむ。」と言いけり。その人、「たはぶれこそ上手なれ。」とて笑ふのみ。
あはれなる月の出づる日、薬草とるため近き森行かば、迷ひぬ。何者もなくさびしながらありくことしばらく、心細くて涙落ち、そこにゐる。いかほど経てか、前より明かり来、「そこ、誰かあるか。」と尋ぬれば、「あり。」とのみ応ふ。「かかるところはいかでかゐる。」と問はれ、少し置きて、「迷ひにけり。」とていらはば、現るる男、かすかに笑ひて、「たびたびあること。」と言ふ。男の様子見えて、思はず、「や、世に稀なるうつくしさかな。」と言へる。男、さらに笑ひて、「あたらしきことば。」と言ひけり。
男の手伸べ、「来よ。」と言ふが、立てなく、「げに、恥づことなるが。」と言ひつつ足を撫でば、男近づき、惺かかへて立つ。「さればよ。軽し。」と言へば、「おろせ。」など言へども、おろさずすすみ、やがてひとつ家に着きにけり。「いづこか。」と問はば、「わが家なり。」と言ひ漸うおろさらる。
☆ ☆
その昔、鬼がいた。人々は、とてもありがたいと崇め、そのくせとても恐ろしいと言った。
一方そのころ。
「向こうへ逃げたぞ!」
「先回りしろ!」
そう、暗い森に響く声があった。光を放っているのはたいまつだ。
村人が追っているのは、ひとりの女と、さらに、ひとりの鬼であった。
容貌が美しいと世間で評判の女が居た。その姿を見たならば、人々は、本当にすぐれていると思うのだ。
彼女は、名を惺と云う。
「どうしようもないほど美しい」
そう言われれば、彼女はにこりと笑って返した。
「嬉しい。けれど、私よりもほかに美しい人はいるでしょう」
「冗談がお上手だ」
返された者は、そう言って笑うばかりだった。
ある風情ある月の出ている日、彼女は薬草を採るために近くにある森に行って、迷ってしまう。
何者もいなくて心細いながら歩き回ること少しの間、さびしくて涙が落ちて、そこに座る。どれくらい経ってか、前より明かりが来た。
「そこに、誰かいるのか」
男の声だった。声を掛けられて、震える喉からやっとのことで声を出した。
「います」
「こんなところにどうして座っているんだ」
そう聞かれて、少し戸惑った。けれど答えないのも失礼かと思って。
「迷ってしまったのです」
そのことが恥ずかしくて、少しうつむいてしまった。
現れた男は、ほのかに笑った。
「ときどきあることだ」
月明かりに照らされ、男の容姿が見えた。
「ああ、世に稀である美しさだわ」
思わず漏れた言葉に、はっと口を押さえる。
「もったないことばだ」
そう言って男は笑った。
男は手を差し伸べてくる。
だけど立てなかった。足を挫いて、ズキズキと痛んでいたのだ。
「本当に、恥ずかしいことなのだけど」
それを察してか、男が近づいてきて、惺を抱きかかえて立つ。
「思ったとおり、軽いな」
「おろして!」
突然のことに顔を赤くして、暴れるが、おろされないで進み、そのままひとつの家に着いてしまった。
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初倖
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女性
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ニートじゃないよ!
趣味:
絵描き、物書き、カラオケ、コスプレ
自己紹介:
うだうだしてます。
腐女子ですよ。
テンションの高い人、又はノリの良いひととなら気軽に絡めます。
コスプレ活動しつつ社会人で(逆)気ままに過ごしてます。
趣味で小説を書き詩を書き絵を描く。
Pixivに生息してます。
相互リンクはいつでも募集中。
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